2013年04月22日

母娘関係の根源性について

母と娘の結合について見てきましたが、もうひとつ、不思議ともいえるパターンについて述べていくことにしましょう。

娘は母と同姓であることから、母に同一化しやすい反面、母親の影を生きさせられることもよくあることです。

ひとつの例ですが、ある女子中学生が登校拒否をし、そのうち母親に対して暴力をふるい始めます。

母親は耐えかねて父親に訴え、今度は父が娘を叱るのですが、娘は父親にも食ってかかり、殴り合いにまで発展して相談に訪れました。

そこで、母親は、娘が父親に当たり散らしていることは、本当は自分が夫に対してやりたかったことではないか、という事実に気づきます。

母親は、夫に従うことをよしとし、言いたいことをこらえて、ひたすら仕えることが女としての生き方だと信じていました。

ところが、その間に無意識に貯めこまれたものを、そのまま娘が引き受けていたのです。

娘も、そのことをわかっているのではなく、わけもわからず両親に文句を言い、やり場のない感情をぶつけていただけなのです。

母親は、自分の問題であることに気付いた後は、夫とも話し合ったり、ぶつかり合ったりをし、これを続けていくうちに娘の問題はすっかり消えてしまいました。

娘に背負わせていた自分の影を、母親が自らのこととして引き受けることによって、家族の問題が解決していったのです。

母娘関係は、根源的なものであると同時に、母親自身が成長していくためにも、こうして起爆剤としてはたらく性質を持っているのです。  


Posted by aurevoir at 10:20親子関係と家族療法

2013年04月21日

母娘関係とギリシャ神話

母と娘の関係というのは、根源的なものであることを見てきました。

この母娘関係が根源的、普遍的であることは、ギリシャ神話にも見て取れます。

ギリシャ神話の有名な物語に、ハーデースがペルセポネーを地下の世界に奪っていくというものがあります。

これは、大地の女神であるデーメーテールの娘、ペルセポネーが野に花を摘んでいる時に、冥界の王であるハーデースが突然地下から現れ、彼女を強奪して去るというものです。

娘を失ったデーメーテールは嘆き悲しみ、そのために地上のすべての植物は枯れ果ててしまいます。

その後、デーメーテールは娘を探しに出かけ、ギリシャの主神ゼウスのはからいにより、デーメーテールとハーデースの間に和解が生じます。

この神話の中には、母娘結合の文化について、そしてそこに男性が侵入してくる過程が描かれています。

そして、それは凄まじい光景を伴っていることも注目すべき点です。

このことを私たちに置き換えてみると、娘は母との結合を断ち切るためには、その内界においてハーデースの侵入を受け入れなければならないことになります。

思春期の娘が、母に対して批判や攻撃の目を向けるようになるのは、このためなのです。

このような時期を経た後で、娘は母性を受け入れ、結婚という人生のステップを歩むことになります。  


Posted by aurevoir at 18:10親子関係と家族療法

2013年04月21日

母娘関係と摂食障害2

母娘関係が、摂食障害につながることについて、述べてきました。

子どもというのは、男女の別はなく、母親との結びつきが最も大切なことになります。

この結びつきは、動物的なものであるといってもいいでしょう。

どの子どもも、例外なく、母親の肉体を通してこの世に生命を受けます。

それゆえに、私たちの意識以前の深い次元の領域に、母と子の結びつきがあるといえます。

思春期までいい子として育ってきた娘が、この時期に食物の摂取という、人間にとって根源的な次元において、母娘の結合の在り方を再確認することを、言葉にはならない症状という形で、真剣に問いかけているともいえるでしょう。

このような娘の真の問いかけに応えるためには、家族療法のカウンセラーなど、治療者の助けを借りながら、母も娘も共に努力をしていくことが大切です。

しかし、それはただ単に表面的に母親が娘を世話すればよいという話にはなりません。

娘の症状を通して、母親自身が自分の生き方や価値観をふり返り、自分が今までに娘に与えてきた影響を理解し、そこから道を探っていくことが必要になります。

それは、人生を築き上げてきたと思われる母親が、娘を通して自分の生き方を変えていく、再構築する過程でもあり、なかなか困難を究める道でもあるといえるでしょう。

  


Posted by aurevoir at 15:18親子関係と家族療法

2013年04月21日

母娘関係と摂食障害

親子関係において、最も根源的ともいえるのが母と娘の関係だといえます。

最近は、この母娘関係の歪みと見られる問題から、家族療法の相談に訪れるパターンも増えています。

その1つの例が、摂食障害です。

これは、思春期から成人あたりの女性に多く見られる症状で、戦後は若い男性にも見られるようになりました。

元々スタイルにそれほど問題はなく、知的な雰囲気の若い女性が、自分の見た目をひどく気にするようになり、痩せ願望から減食をし、異常なまでに痩せてしまうといった症状がよく見られます。

それまでは、親の言うことにもよく従い、いい子であったのに、親の意見を受け付けず、食べ物を拒否するようになります。

無理に食べさせようとすると、今度は嘔吐してしまうようになります。

そのうちに月経も止まり、見た目にも痩せすぎで、家族が困り果てて相談に訪れるようになります。

摂食障害の場合は、本人はただ痩せることに執着をしているだけで、自分に問題があるとは感じていないことが多いものです。

本人は、痩せることで自分が美しく価値のある人間だと感じられるので、もっと減食をして痩せようとすら思っています。

これは、医学的には、近年先進国において増加してきたノイローゼの一種とされています。

かつて、一世を風靡した、カーペンターズのカレン・カーペンターが、この摂食障害で命を落としています。

家庭的な特徴としては、母親がバリバリと強いイメージで、父親はやや影の薄いタイプがパターンとして見られます。

これといって欠点のない家庭に見えますが、ここには、娘が母親に土着的な身体性を感じられなかったことが、見て取れます。

本来、母親というのは善悪を越えて子どもを受け入れ、その存在を全肯定するはずです。

それが、何かと娘を判断し、よい成績を取り高い学歴を獲得することや、現代的なキャリアを身につけること、高い収入を得ることなどを期待したり、母親の夢や願望を一方的に押し付けるような態度を取ることで、娘は女性としての自分を否定し、身体性を否定するようになるのです。

摂食障害は、放っておくと死に至ることもあることから、自らの生命さえ否定しようとする行為だと言っても過言ではありません。

参考サイト: 摂食障害

  


Posted by aurevoir at 12:21親子関係と家族療法